回路シミュレータはLTSpice/SwCAD IIIに決定

アナログ回路設計では特性評価に回路シミュレーションが不可欠です.大まかには設計時に手計算で特性を求めはしますが,詰めの評価(レイアウト依存の寄生素子の影響,温度や素子ばらつきによる特性ばらつき幅の評価,ノイズや周波数特性の評価など)には回路シミュレータが必要です.

回路シミュレータの代名詞でもあるspiceは,バークレー大で開発されました http://bwrc.eecs.berkeley.edu/Classes/icbook/SPICE/.その系譜を受け継ぐフリーな回路シミュレータに,Ngspice, the open source Spice circuit simulator - IntroGnucap Wikiがあります.これらをCygwin上でコンパイルするなどしていたのですが,もっとよいシミュレータがありました.

それがこちらのアナログ・デバイセズとリニアテクノロジーの統合について | アナログ・デバイセズ.リニアテクノロジ社の製品を使う回路設計にと無償で公開されています.回路シミュレータのみならず回路図エディタと波形表示機能があります.使ってみたところ,お仕事で使っていたお値段数百万円のhspiceより使い勝手がよかったりします.

回路シミュレータ自体が汎用のSpiceで,回路ノードなどの機能制限がないばかりか64-bit対応をしていて数Gbyteの波形データも扱えます(とドキュメントには書いてある).

これのよいところは,1)スイッチング回路に最適化されているためにデジタル,アナログ回路が混在したミックスドシグナル回路のシミュレーションが実用的にできる,2)波形表示の操作が直感的で使いやすい, の2点だと思います.

まず前者.hspiceでアナログ,デジタルの混在回路をシミュレーションしてみれば分かりますが,クロックの変化時(立ち上がり/立下り)でシミュレーション速度が極めて低下したことがありました.おそらくは,D.F.Fの振る舞いを収束性よくシミュレーションしたためかと思われました.このLTspiceは,スイッチ回路のシミュレーションに最適化されているだけあり,論理回路が混在しても速度が落ちないようです.(どんなアルゴリズムを使用しているかは,ドキュメントを読む限りは不明ですが)

そして後者の,波形表示の使い易さもすばらしいです.仕事でCadence社のDesign Framework-IIを使いますが,これの回路シミュレーションをするAnalog artistよりも使いやすいくらいです.日本シノプシス合同会社と使う波形表示ソフトよりも(過渡解析など一般的な結果表示について,特殊な機能を除く)数段上に感じます.

オープンソースの回路シミュレータは波形表示機能が貧弱です.開発フェーズで回路構成を様々検討する場合などは,ストレスなく結果を確認するために,波形表示機能の使いやすさはとても重要です.