Hardware as a Serviceでいってみよう

わふ〜>ω<

個人でiOSアプリ開発をやりますといって3年目。じつはストアにアプリをそんなに出していません。個人事業主という立場だけじゃなくて、開発できますよと人の目に触れるアピールはぜんぜんしていないし、アプリは、いや、出してはるのですが、発注元の肩書きだったして、人の目には触れないのです。

でも開発でご飯たべてるんですよ

でも開発で御飯食べれているのはなぜ?というと、アプリ開発に必要なライブラリやハードウェア開発をしています。ですから表にはでないです。

いまはiOSアプリ開発者なんて、石を投げればぶつかるくらいにたくさんいます。けれど、その経歴はデザイン系、ウェブ系の方が多いです。ですからアプリを作る方はたくさんいるけれど、ちょっと工学の知識がいるとかハードウェアをやりたいとか思うと、とたんにできる人いなくなります。

そりゃ、そうでしょう。個人では収入も仕事も不安定だし、イケてるスマフォのアプリ開発会社って今はソーシャルとかゲームとか、そっちでしょう。その世界で生きてる人は、その世界に必要な技術を身につけている人ですから。その世界で使っていないハードウェアの開発者が、いるわけがない。

この状況で、アルゴリズムを理解してライブラリを作れます、ハードウェアもできます、という立ち位置でお仕事ができています。

何やってるの?

じゃ、どんな開発をしている?っていうと、1つは動画系。動画像を解析して、ここがハイライトシーンだよ、と自動処理してくれるライブラリ(大学の研究成果のiPhoneポーティング)や、ぐーちょきぱーの手を検出するハンドジェスチャ等の、カメラ、動画解析のライブラリを担当しています。画処理の開発をうける人って、いないから、案件も面白いしチャレンジングだし、自分自身の学ぶところも多くて、これは楽しいです。

もう1つは、ハードウェア系。あとは、スマートホンにない機能を補う、あるいはスマートフォンをちょと拡張するハードウェアの開発をしてました。この3ヶ月はこちらが主力でした。例えば、
こんなの。イヤホン端子にドングルをさして磁気カードをスワイプすると、その情報が読み出せるドングルなのですね。音声帯域信号の解析で磁気カード読み出しなんて20年以上前からある技術で、もう特許なんかはるか昔に切れているし、誰でも作れるんじゃね?と思われるんですけど、実際に作ってみると、ぴー(秘密)、という問題もあり、使えるものにするにはちょっと工夫をしました。

そんなのどこでもあるんじゃね?

昔から磁気カードリーダを作っている会社も、いまどきスマフォの波に乗れと、スマフォにつながる磁気カードリーダを作ってるんです。それら製品を自社サービスに使いたいと聞くと、完成した製品を使ってくださいカスタム開発は対応できないです、とか、APIの決済会社は固定されていて変更はできませんとか、パッと見使えそうなのに、痒いところに手が届かなくて、自社で使うには微妙(使えないわけではない)だったりします。

スマフォな社会にあわせて会社を設計する時代なのかな

昔から磁気カードリーダを作っている会社からすれば、そりゃ、ハードウェアを売ってそれで儲けてきたのだから、スマフォになっても同じ程度の利益が出せまいと、って思いますよね。そうすれば、外部筐体を含めた完成品を買ってください、割りに合わないカスタム開発はうけられません、となります。それに昔からの取引関係があるから、決済会社はここだけ対応だよ、ってなっちゃいます。

でもね、スマフォに対応って、ハードがスマフォになるだけの変化じゃないです。周りの環境も、ものすごく変わってて、そのなかの1つがスマフォの流れ、なのですよ。例えば決済1つとっても、PayPalとかオンラインにあわせて最初から設計された会社があって、その会社の決済手数料なんて4%くらい。昔から決済サービスを提供している国内会社に比べたら、ものすごく安いし、高い手数料に見合う付加価値を国内会社が提供しているわけじゃない。それ用に設計された会社と比較することが、もう意味がなくなっちゃう。

その意味のない世界の中で、昔ながらにやってきた会社が開発したものが、使いやすいわけはないだろうと、なっとくします。

今の時代にあわせて開発すると、受託じゃなくてHardware as a Serviceじゃなイカ

こんな感じでこの3ヶ月はハード開発をしていて、いい感じの流れだなと思って、終わって見返すと、この流れは受託開発とも違うきがします。発注と納品の流れを図にすると:

Aがよくある受託開発で、依頼主からの発注を受けて開発して成果物を納品する流れです。成果物に対して依頼主から開発者に報酬が支払われます。納品後は、メンテナンスあるいは機能拡張のたびに、発注と納品を繰り返していきます。

これに対して、今回のスマートフォンを拡張するハードウェア、あるいはスマートフォンに無い機能を補うハードウェア(磁気カードリーダはこの分類になります)の開発はBの流れになります。依頼主から開発者に、必要な仕様をだしてもらい開発した成果物を、ライセンスという形で依頼主に渡します。依頼主はその成果物を使って自社サービスを展開します。開発者は、成果物それ自体の権利を持たせてもらい、他社にもライセンスをしていきます。ライセンスの方法は、期限を設定して特定分野で占有するものや、制限なく利用権利のみを得るものを、組み合わせます。

また他社の要望に合わせて機能を拡張したとき、また不具合を修正した場合は、同じくライセンスをした他社にも、(ラインセンス費用は別個に設定するかもしれませんが)その機能を提供していきます。開発元に権利を持たせてもらい、開発元がプラットホーム化して共通基盤としてハード(とそれに伴うソフト)をすぐに使える状態で提供していきます。

依頼主にとっての利点は:

  • 求めるものを初期開発費用を少なく手にできる
  • 保守や機能拡張に全額費用負担がいらない(かもしれない)

開発者には:

  • 1回の開発が何度も収入になる
  • 特許のクリアや筐体設計などの納品の後プロセスで発生する情報ももらえる

があります。

これが成立する条件:

  • ニッチ(単価 < 1000万円、既存組み込み会社が手を出すには小さすぎるところ)
  • どの開発者に頼めばいいか分からない (だれでもできるわけではない)
  • ハードウェア自体には価値がない

今回の開発だと、サービスを使ってもらうために(実質)無料でハードウェアを配ることになります。従来のハードウェア販売で利益を得たい目線では、この商売に付き合いにくいです。また受託開発では、自分は納品がゴール、相手はサービスインがゴールになり、利益を得るタイミングと目標がずれるのも、うまい組み方ではないと思います。

開発成果物を実際の事業で使かうには、納品後にいくつかの追加プロセス、知財チェックと筐体等の追加ハードウェア設計、が必要です。1回開発したものを他社へのライセンスでは、これらのプロセスまで通ったことを確認した状態で提供できると、その時間と費用の削減効果があります。